原子力とは何か


「原子力」と聞くと、何となく「危険なもの」というイメージを持つかと思いますが、実際にどんな力なのかはよく知らない方が多いのではないでしょうか。

そこで今回は「原子力とは何か」ということを説明していきたいと思います。


原子力を知るうえで前提として知っておいていただきたいのが「原子」の構造です。

原子とは世の中の全ての物質を構成する最小単位で、中心に原子核、その周囲に電子が存在することで1つの原子となっています。

また、原子力を発生させる方法は大きく分けて ①核融合 ②核分裂 の2つの方法があります。

それぞれ順に説明していきたいと思います。

核融合による原子力


まずは、核融合による原子力について説明していきます。

原子力を生む原子の1つである「重水素」という物質を例に説明します。

重水素原子の中心には原子核がありますが、その中にはプラスの電気を持つ「陽子」が1個と、電気的に中性の「中性子」が1個存在しています。
原子核の周囲にはマイナスの電気を持つ電子が1個存在しており、陽子のプラスに引き付けられています。


重水素は単体の原子で存在するよりも、お互いの電子を共有する化学結合(共有結合)をして、2個1組(分子)で存在していることが多いです。

お互いの原子核でそれぞれの電子を引き付けることでより安定した状態になるためです。



上記のようにお互いの電子を共有する結合以外に、もう1つ2個の重水素原子が合体する方法があります。
それは、お互いの原子核同士を合体させる方法で、これは「核融合」と呼ばれます。

お互いの原子核はどちらもプラスの電気をもっているため、近づけようとすると反発します。
核融合をするためには、その反発に負けないように、強力な力を与えて合体させる必要があります。


強い力で重水素原子同士の原子核が融合すると、新しい1つの原子ができます。
これは原子核の中に陽子と中性子を2個ずつ持ち、その周囲に電子が2個存在する「ヘリウム」という物質です。

核融合において重要なのは、原子核同士が核融合すると、陽子や中性子の質量が減る、ということです。
物質の質量が減ると、外部に多大なエネルギーを放出します。
(これはアインシュタインが提唱した理論の1つです。)


イメージとしては、陽子や中性子の一部を外部に放出する際に、外部の原子・分子にぶつかって振動することで、大量の熱などを発する、というのがイメージしやすいかもしれません



以上が、原子同士の「核融合」による原子力の説明です。

なお、「水素爆弾(水爆)」という兵器は、上記の重水素原子の核融合の仕組みを用いた爆弾です。


核分裂による原子力


続いて、核分裂による原子力の説明をしていきたいと思います。


核分裂には「ウラン235」という原子が使われます。
ウラン235は原子核の中に92個の陽子と143個の中性子を持つ原子です。(電子は省略します)

陽子同士はお互いのプラスの電気により反発しあいますが、それらを上回る強い力で1つの原子核の中に結びつけられています。
(この力は核力(強い力)と呼ばれ、電力や磁力よりはるかに強力な力です。)


ここで、ウラン235に外部から中性子をぶつけます。
核力では現状の数の陽子と中性子を結びつけるのが限界で、それ以上は安定的に結びつけることができません。

そのため、中性子をぶつけられたウラン235はその原子核を2つに分裂させます。
分裂すると「セシウム」や「ルビジウム」という物質となり、不要な中性子を外部に放出します。


分裂した物質は分裂前と比較して陽子や中性子が少ないため、それらを結びつけておく核力は少なくて済みます。
よって余ったエネルギーは外部に放出されます。

イメージとしては、分裂した際の勢いで外部の原子・分子を振動させることで熱などを放出すると考えるとイメージしやすいでしょう。
(なお、核融合同様に質量が減ることによるエネルギーの放出も起こっています。)


これが、核分裂による原子力です。
原子力発電や原子爆弾はこの核分裂の仕組みを使用しています。

一か所ににウラン235を集めておいて中性子をぶつけると、核分裂が発生します。
分裂した物質からも中性子が飛び出し、それが別のウラン235にぶつかり分裂・・・と、これを繰り返すことで、膨大なエネルギーを放出する、という仕組みです。

また、このエネルギーに含まれるのが「放射線」と呼ばれる電磁波の一種で、強いエネルギーを持っているため、人間の細胞などを壊してしまうわけです。

なお、原子爆弾と原子力発電では、使用するウラン235の濃度が異なります。
原爆がウラン235の濃度が100%に近いのに対し、原子力発電は約4%なので、急激な反応は起こらず、安全に設計されているわけです。

原子力発電においては、異常に核分裂が進まないよう、適度に中性子を吸収する物質(制御棒)を刺すことで制御しています。

しかし、この制御棒がうまく作動しなかったり、機構が破壊されるなどで、想定外の核分裂が進んでしまうのが「臨界事故」と呼ばれるもので、発電所の外部に熱や放射線が放出されることにつながります。



以上、原子力とは何か、ということを説明しました。

原子力は小さな物質から膨大なエネルギーを取り出すことができるすごいエネルギー源ですが、裏返せば非常に危険な存在であるということです。

ここでは原子力の是非は語りませんが、今後の人間の暮らしにおいて議論が続く存在であることは間違いないでしょう。


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