私たちが生きている地球は、常に一定の空気の移動(大気循環)が起こっており、その大気循環によって様々な気象現象や環境が作られています。
今回は地球上の大気循環とその原理について説明していきたいと思います。
地球上には大きく以下の3つの大気循環があります。
①ハドレー循環
②極循環
③フェレル循環
加えて、空気を西や東向きに曲げ、偏西風や偏東風のもととなる「コリオリの力」という重要な力があります。
今回はそのうちの「ハドレー循環」と「コリオリの力」について説明していきたいと思います。
ハドレー循環とは
ハドレー循環とは、赤道付近で空気が上昇し、その後南北へ分かれ、緯度30°辺り(3000キロほど移動した辺り)で下降し、今度は地上付近で赤道に戻っていく空気の循環となります。
なぜこのような大気の循環が生まれるのか、原理を説明していきます。
①赤道付近で空気が暖められて上昇気流となる
「夏はなぜ暑いか」で説明した通り、赤道付近は太陽の光を真上に近い位置から受けるため、空気が暖まりやすくなっており、暖まった空気は膨張して軽くなるため、上昇していきます。
②上空に空気が溜まると、周囲の空気の少ないところへ移動
上昇気流により上空に空気が溜まってくると、その南北の空気の少ないところへ移動していくこととなります。(「なぜ風が吹くのか」参照)
③途中で「コリオリの力」により風が東向きに曲げられる
南北へ移動した空気はそのまま北極や南極まで行くかと思えばそうではなく、途中で「コリオリの力」によって東向きに曲げられます。
このコリオリの力というのが重要なのですが、なかなか原理が理解しがたいところでもあるので以下で説明をします。
コリオリの力というのは、動く場所から物体を投げた時、慣性によって狙った場所よりずれた場所にものが到着する現象(見かけ上、物体に力が加わったように見える)のことを言います。
下の図で説明すると、時速50kmで右に動く車から、時速10kmで右に動く人にボールを投げたとします。
ボールは上に向かって投げますが、投げる前は車と同じ時速50kmで右に移動していたため、手を離れても「慣性」により右に50kmで移動し続けます。
結果、人に向かって投げたつもりが、ボールは人よりも右側に到着することとなります。
これと同じことが地球規模でも起こっていると考えられています。
赤道付近は地球上で一番直径が長い場所です。
しかし、他の場所と同様、24時間で1周します。
つまり、赤道付近は最も速い速度で回っている場所となります。
仮に赤道付近の速度を100、北緯30付近の速度を80とします。
赤道付近で上昇した空気が北に向かって風として吹きます。風は慣性によって速度100で右へ移動するため、速度80で右に移動している真北より右側に到着することとなります。
結果、CからC’に向かって吹き出した風は、Dに到着するため、風が右に曲げられ、東向きの風となるというわけです。
ちなみに、逆に北から南に向かって風が吹く場合は、風は速度80で右に移動するのに対し、真南は速度100で右に移動するため、C’より左に到着することとなります。つまり、西向きの風になります。
このコリオリの力により、風は北緯30°付近で東向きに曲げられてしまうため、それ以上北上することはないのです。
ここからまた、ハドレー循環の説明に戻ります。
④北緯30°付近で下降気流となる
北緯30°付近でコリオリの力により空気は北には行けず、南からはどんどん新しい風が来る、東西にも曲げられた空気が溜まっている状態となるため、空気の行先は「下」しかなくなり、下降気流となります。
下降気流となるため、北緯30°付近の地上は空気が溜まる「高気圧」となります。
⑤北緯30°の高気圧から赤道の低気圧に空気が移動する
北緯30°付近が「高気圧」となるのに対し、赤道付近は上昇気流のため地上付近の空気が少なくなり「低気圧」となっています。
その結果、「高気圧」から「低気圧」に向かって空気が移動します。
こうして、赤道付近で上昇した空気が緯度30°付近で下降し、地上で赤道付近に戻ってくる大気循環が出来上がります。これを「ハドレー循環」と呼んでいます。
ちなみに⑤で説明したとおり、地表付近では、北緯30°から赤道に向かって空気が移動しますが、これは前述のとおり「コリオリの力」により西向きに曲げられます(東風になる)
このように、北緯30°~赤道の間で恒常的に吹く東風は「貿易風」と呼ばれ、昔の帆船の時代には東から西に効率的に移動するために非常に重要な風でした。
今回は大気循環の1つ「ハドレー循環」と「コリオリの力」について説明しました。次回は残りの「極循環」「フェレル循環」について説明していきたいと思います。