電磁波とは何か② 電磁波の影響と起こる現象


前回の記事で「電磁波とは何か」ということを説明しました。

簡単におさらいすると、電磁波は電子の振動により発する電場と磁場が伝わっていくもので、それが物体に到達すると、その物体の電子を振動させます。

電子の振動に合わせて電場と磁場の向きは変化しつつ伝わっていきますが、その変化が速いと物体中の電子を揺さぶる力も強い(エネルギーが高い)、逆にその変化が遅いと物体中の電子を動かす力が弱い(エネルギーが低い)ということとなります。

今回は、電磁波によって物体の電子が揺さぶられることで、どのような自然現象が起こるか、ということを説明していきます。


物体ごとに影響を受けやすい電磁波の波長が異なる


まず最初に説明したいのが、物体(原子・分子)によって、影響を受ける電磁波の波長が異なる、ということです。

言い換えると、

ある物体(原子・分子)は「短い波長」には揺さぶられやすいが、「長い波長」には揺さぶられにくい。
また別の物体は「長い波長」には揺さぶられやすいが、「短い波長」には揺さぶられにくい。


ということです。

なぜ、このようなことが起こるか、説明していきます。


物体を構成する原子は、中心にプラスの電気を持つ原子核があり、その周囲に、プラスに引き付けられる形でマイナスの電気を持つ電子が存在しています。


原子や分子の種類ごとに、原子核が電子を引き付ける力(束縛する力)が異なります。

電子を引き付ける力が強い場合、電子は自由に動ける範囲が狭くなりますので、電子が振動する範囲は狭く、短い間隔を素早く振動することとなります。

一方、電子を引き付ける力が弱い場合、電子は自由に動ける範囲が広くなりますので、電子が振動する範囲は広く、長い間隔を時間をかけて振動することとなります。




短い間隔を振動する電子に「短い波長」の電磁波が当たると、ちょうど電子の折り返しのタイミングで反対向きの電磁波(電場or磁場)が届くことから、タイミングよく電子が引っ張られることとなります。

しかし、そこに「長い波長」の電磁波が当たっても、電子の振動のタイミングと、電磁波の向きが変わるタイミングが合わないことから、電子は電磁波の影響を受けず、電磁波は電子をスルーして通過してしまいます。




逆に、長い間隔を振動する電子の場合「長い波長」の電磁波が当たると、ちょうど折り返しのイミングで反対向きの電磁波(電場or磁場)が届くことから、タイミングよく電子が引っ張られることとなります。

しかし「短い波長」の電磁波は、そのほとんどが電子の振動のタイミングと合わないため、スルーされ通過することとなります。




このように、物質ごとに電子の振動幅(速さ)が異なることで、タイミングが一致する電磁波も異なるのです。


これは、ブランコをイメージするとわかりやすいかもしれません。

ブランコがちょうど折り返しのタイミングで背中を押してあげると、ブランコはうまく力を受け取って、うまく揺れることができます。
しかし、ブランコがいないタイミングで押してもブランコに触ることはできず、ブランコに力は伝わりません。

電磁波と電子のタイミングが一致する、というのも、このイメージで考えてください。




このように、物質(原子・分子)ごとに、影響を受けやすい電磁波がある、ということを前提として、波長ごとの電磁波の種類を示したのが以下の図です。

それぞれの電磁波について、特性を順番に説明していきます。


可視光線


最初に説明したいのが、波長が400nm~800nmの長さの電磁波。

この電磁波は「可視光線」(目に見える電磁波)と呼ばれ、実はこれが私たちが見ている「光」なのです。
さらに、可視光線の中で波長が短いほうから「紫、青、緑、黄緑、黄色、オレンジ、赤」にように、異なる色として私たちは認識をしています。

つまり、物体の色の正体は「電磁波」ということになります。

しかし、世の中のほとんどの物体は自ら光を発することはありません。
自ら光を発しない物体に色がついて見えるのは、太陽や電気の光を「反射」しているためです。

先ほど説明した通り、物体ごとに影響を受けやすい電磁波が存在します。
赤い物体は、赤い電磁波に反応し、電子が振動することで同じ電磁波を外に発するので、赤い色を発しているように見えるのです。
(これが光の「反射」です。)



上記は、リンゴの具体例です。

リンゴの皮は、波長の長い「赤い電磁波」に反応し、その電子が振動します。その電子の振動により、外部に同様の「赤い電磁波」を発するためリンゴは赤く見えます。

一方「その他の色の電磁波」にはあまり反応しないため、それらの電磁波はリンゴの皮を通過して中に入っていきます。
よって、それらの色は外部に発しないので、それらの色は見えないこととなります。

つまり、物体の色というのは、自ら光を発する物体を除き、どの色の電磁波に反応するかで決まる、ということになります。



可視光線以外の光


続いて、可視光線以外の電磁波についても説明していきたいと思います。

可視光線以外の電磁波は、人間の目には見えませんが、その電磁波の波長に合った物質(エネルギーを受け取ることができる物質)は存在するため、波長ごとに様々な現象を引き起こします。




電波


まずは最も波長の長い「電波」

その長い波長には壁などは反応せず、電気を通す(電子が動きやすい)物体である「導体」が反応します。
電波による電子の振動が画面やスピーカーなどに伝えられることで、テレビやラジオの放送に使われる電磁波です。




赤外線


次に可視光線より少し波長の長い「赤外線」
(赤色の外にある電磁波なので赤「外」線)

この電磁波には、人間の皮膚や空気、地面など、地球上のあらゆる物質が反応します。

この電磁波によって振動させられた電子はそのまま原子も振動させることで、物質に「熱」を発生させます。
つまり、赤外線は「ものを暖める効果」があるのです。

赤外線よりやや長い波長の「マイクロ波」は特に水分子に強く作用し、物体の水分子を振動させることで物体を暖めます。
この原理を利用したのが「電子レンジ」です。




紫外線


次は可視光線より少し波長の短い「紫外線」
(紫の外側にある電磁波なので紫「外」線)

この電磁波は、タンパク質に作用し、タンパク質の化学結合を破壊することがあります。

人間の肌はタンパク質でできているため、紫外線が肌荒れにつながる、と言われるのはこのためです。
一方で、その化学結合の分解する過程で「ビタミンD」を生成する役割や殺菌作用もあり、一概に悪者とは言えないのが紫外線です。




X線


さらに波長が短いのが「X線」

レントゲンに使われるので聞いたことがあると思います。
これは、人間の体のほとんどには反応せず通過します。

しかし、X線はカルシウムを多く含む骨内部で吸収されるため、骨の部分だけは通過しないため、そこだけが別の色に映る、という仕組みです。




ガンマ線


最後に、最も波長が短いのが「ガンマ線」です。

核分裂などの非常に激しい電子の振動から発せられる電磁波で、非常に高いエネルギーを持っています。
その電磁波が人体にあたると、細胞中の電子を激しく振動させ、電子は細胞を飛び出します。

飛び出した電子は他の細胞に当たり、その細胞を傷つけます。

その傷によって細胞が死んだり、傷修復時のエラーにより異常な細胞に変異することがあります。
これが放射線による「被ばく」と呼ばれる状態です。




以上、電磁波の波長ごとの特性と、それによって引き起こされる現象について説明をしました。

「電磁波」と聞くと、何か得体の知れない危険なもの、と思う方もいるかもれませんが、実は光や赤外線など、私たちの生活に身近なものも「電磁波」だった、と知っておくとよいでしょう。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です