磁力とは何か2 ~磁石にくっつく、くっつかないの違い~

前回の記事で、磁力の基本的な原理をご説明しました。(磁力とは何か1

今回は、物質によって磁石にくっつくもの、くっつかないものがあり、この違いはどこから生じるのか、についてご説明いたします。

<磁力を発生させない物質>

まずは、磁力を発生させない物質(磁石にくっつかない物質)について説明します。

まず、前回の記事でご説明した通り、前提として、すべての物質は原子内で電子が動くことにより磁力を発生させている、ということを思い出してください。



多くの物質は、原子内で電子がペアで存在しており、その電子同士が、お互いの磁力を打ち消すように動いています。
その結果、物質全体では磁力が発生しないことになります。

物質として磁力を発することがないため、この物質は磁石にくっつきません。


<磁力を発生させる物質>

一方、物質によっては電子がペアで存在していないものがあり、これは物質全体として磁力を発生させることになります。

このような物質においても、通常は熱の振動等により原子ごとの磁力の向きはバラバラですが、
磁石を近づけることで、それに引き寄せられるように磁力の向きが揃います。

その結果、磁石にくっつくことになるわけです。これを「常磁性」と呼びます。

また、一部の物質においては、このような磁力を持つ原子が隣接しており、原子同士でお互いの向きを揃え合う作用が生じます。

その結果、物質全体として磁力の向きが揃いやすく、強い磁力を持つことになります。

これを「強磁性」と呼び、鉄などがその代表です。

<永久磁石とは>

しかし、このように磁石を近づけると強い磁力を発する物質であっても、磁石を遠ざけると、また熱の振動などで磁力の向きはバラバラに戻ってしまします。

ここに、「ネオジム」や「フェライト」といった特別な物質が混ざると、その物質が磁力の向きを固定させる働きをし、磁石を離しても磁力が残ることになります。

これがいわゆる「永久磁石」というものです。

<詳しい説明>
「ネオジム」や「フェライト」のように重い元素は、陽子(+の電荷)の数が多いため、原子核に電子(-の電荷)を引き付ける力も強くなっています。

その引き付ける力に釣り合うように、電子も高速で動いていると考えられており、電子が高速で動く結果、強い磁力を発することになります。

その磁力と、電子自身の動きにより生じる磁力が相互作用(スピン軌道相互作用)を起こすことで、磁力の向きが固定される、と言われています。

最後に、磁石にくっつかない物質について、1つ補足します。

あらゆる物質は、磁石を近づけると、磁石の磁力により電子の運動が促進されます。
(これは電磁誘導という現象です。)

その際、電子は磁石の磁力に反発する磁力を発するように動きます。全ての物質は、「安定した状態を取りたがる」性質があるため、外部からの磁力を打ち消そうとするわけです。

この性質を「反磁性」と呼びますが、この力はとても弱いため、前述の「常磁性」「強磁性」を持つ物質では現れてきません。

なお、水は「常磁性」「強磁性」いずれも持たないため、蛇口から流れる水道水に強力な磁石を近づけると「反磁性」を示して、磁石とは反対に曲がるのです。

以上、磁石にくっつく、くっつかない、という点を中心に、磁力について説明いたしました。

最終的には「そういう自然法則である」という説明になってしまい申し訳ありませんが、ある程度は磁力について、理解を深めていただけたかと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です