前回の記事で、半導体の基本として、「不純物を混ぜることで絶縁体が電気を流すようになる」ということと、不純物の混ぜ方によって、
①余った自由電子が動くN型
②自由電子が不足した穴に向かって電子が動くP型
の2通りの半導体がある、ということを説明しました。
(前回の記事:半導体とは何か①)
今回はN型とP型の半導体を組み合わせることで作られる、半導体の様々な性質について説明していきたいと思います。
整流作用
前回の記事で説明したN型半導体とP型半導体を組み合わせると以下の図のようになります。
前提として、自由電子はマイナスの電気を持ちます。そして、その自由電子が不足した穴はマイナスが不足するのでプラスの電気を持ちます。
N型とP型の境目で、N型の自由電子(マイナス)とP型の正孔(プラス)が自然と引き合って結合し、自由電子も正孔もない空間ができます。
これは「空乏層」と呼ばれ、電気が流れにくい「壁」となっています。
ここで、N型に-、P型に+の電圧をかけたとします。
-の電圧に反発して、N型の自由電子は中心の空乏層に集まっていきます。
同様に、+の電圧に反発して、P型の正孔も空乏層に集まっていきます。
(空乏層に自由電子や正孔が集まるので、自由電子も正孔もない空間(空乏層)は狭くなる)
空乏層に入る電子の量が多くなってくると、一部は正孔と結合して消滅しますが、一部は狭くなった空乏層(壁)を飛び越えてP型に移動し、P型の端まで移動するため、結果、電気が流れます。
逆に、N型に+、P型に-の電圧をかけたとします。
+の電圧に引き付けられ、N型の自由電子は電圧の方(外側)に引き付けられます。同様に、-の電圧に引き付けられ、P型の自由電子は電圧の方(外側)に引き付けられます。
結果、中心に存在する自由電子や正孔は少なくなります。
つまり、自由電子や正孔のない空間=空乏層が広くなり、電気は流れません。
このように、N型とP型の組み合わせにより電気の流れる方向を決めることができるのが半導体の特徴です。
(整流作用と呼びます)
このように電気の流れを一方向にする装置を「ダイオード」と呼び、電気が流れる際に空乏層で自由電子と正孔が結合するときに生じる光エネルギーを利用したのが「発光ダイオード」です。
定電圧
整流作用のところで、逆方向に電圧をかけた場合、電流は流れない、と説明しました。
しかし、電圧がある一定の値を超えると、急激に電流が流れ始めるところがあります。
これは、電圧が、原子核が電子を束縛する力を上回ることで、束縛が解かれ、電子が自由に動けるようになることによります。
束縛を解かれることで急激な電流が流れる過程で熱などを発生し、電流はエネルギーを失っていきます。
結果、反対側に到達するときには力が弱くなっており、反対側端に生じさせる電圧は一定値に収まることとなります。
この現象により、過電圧を防ぎ、電圧を一定に保つ作用が半導体にはあります。
(この現象をツェナー効果とよび、この半導体部品を「ツェナーダイオード」と呼びます。)
スイッチング(増幅)
今度はN型、P型、N型の順に半導体を組み合わせます。
整流作用のところで説明したとおり、N型1とP型の間、N型2とP型の間に空乏層ができます。
また、
N型1の端をE(エミッタ)
P型の端をB(ベース)
N型2の端をC(コレクタ)
と名前を付けます。
ここで、E-C間に、Eにマイナス、Cにプラスの電圧をかけます。
整流作用のところで説明したとおり、N型1の自由電子は空乏層を超えてP型の端まで移動することができます。
一方、P型とN型2の方を見てみると、これも整流作用のところで説明したとおり、空乏層が広がる(電流が流れない)電圧のかけ方になっています。
N型1からP型まで移動してきた自由電子は、広がった空乏層を超えるエネルギーは持っていないため、N型2に到達することはできません。
結果、E-C間に電流は流れない、ということにになります。
次に、E-C間に電圧をかけたまま、さらにE-B間にも電圧をかけます。
(Eにマイナス、Bにプラスの電圧)
N型1からP型に移動した自由電子はBに引っ張られ、そのまま回路を流れて再びEに戻ってきます。よって、E-B間には電流が流れます。
E-B間に電流が流れることで、N型1からP型へ絶えず自由電子が供給されることになります。
P型に入ってくる自由電子が増えるので、同時にN型2に向かっていく自由電子が増え、その勢いで空乏層を超える自由電子がでてきます。その結果、E-C間に電流が流れます。
まとめると、最初はE-C間に電流は流れませんでしたが、E-B間に電流を流すことで、それがきっかけとなって、E-C間にも電流を流すことができるようになります。
つまり、E-B間の電流は、E-C間の電流のスイッチ的な役割をしています。(スイッチング作用)
また、E-B間に小さい電流を流すことで、E-C間に大きな電流を流すことができるので、「増幅作用」とも呼ばれます。
このように「スイッチング」や「増幅」を行うための半導体部品を「トランジスタ」と呼びます。
今回は半導体の「整流」「定電圧」「スイッチング・増幅」作用を説明しました。
こうした作用を組み合わせることで、必要な時に必要な個所に方向に電気を流す、また、間違った方向に電気が流れない、過剰な電圧がかからないようにする、複雑な電気の回路を作ることができるのです。
ほとんどの電子機器に半導体部品や回路が使われることから、昨今半導体不足が叫ばれているのです。