以前の記事で「化学エネルギーとは何か」を説明しました。
化学エネルギーというのは、原子や結合した分子が物質内に貯めているエネルギーと説明しましたが、
人間が体を動かすことができるのもこの化学エネルギーによるものなのです。
そこで今回は化学エネルギーから人間の体を動かす仕組みについてご説明します。
人間は、食事で摂取した糖を、体内でATP(アデノシン三リン酸)という物質に変えます。
ATPは「アデニン」「リボース」という物質に、3つの「リン酸基」が結合して構成されています。
この「リン酸基」同士の結合に、化学エネルギーが蓄えられています。
おさらいになりますが、化学エネルギーをイメージで説明すると、以下の2通りの説明ができます。
①原子核が電子を引き付ける力が弱い時、電子が原子から離れようとするエネルギー
②原子同士が結合した分子において、電子の配置等により結合が不安定になり、原子同士が離れようとするエネルギー
今回の場合は②に該当します。
リン酸基同士は結合していますが、リン酸基は「マイナスの電荷を持つ電子」を過剰に持っているため、全体として電荷はマイナスとなっています。
そのため、リン酸基とリン酸基はお互いのマイナスにより離れようと反発します。
つまり結合が不安定な状態であり、高い化学エネルギーを持っている、ということになります。
不安定な状態であるATPに水分子を反応させると、リン酸基が1つ外れて水分子と結合し、リン酸(安定な状態)となります。
この際に、リン酸基がATPから外れる分子の動きが、周囲の分子を運動させ、熱エネルギーを発生させます。
ここで発生した熱の振動がタンパク質に伝わり、筋肉内のタンパク質が運動します。
その動きにより筋肉が収縮し、人間の体が動く、ということになります。
(この際に使用されるタンパク質は「モータータンパク質」と呼ばれます。)
以上、化学エネルギーの具体例として、人間が体を動かす仕組みを説明しました。
「化学エネルギー」というのは非常にイメージしにくいものですが、実際に私達の体内に「動こうとしている原子や分子がある」とイメージしてもらえればよいかと思います。